小さな会社の人事や総務を行っていると、突然法務の仕事が舞い込んでくるときがあります。
やったことないのに!!となる人も非常に多いですよね。そもそも法務の担当者って法律学部出身だったりそういうところからなるのでは?なんて思ったりするのですが、、
ベンチャー企業には基本的にそんなことを言っていられるほど人材に余裕はありません。
今回法務を始めて行ったときに気を付けたこと、考えたこと、盛り込んでおいた方がよいことについてまとめます。
Contents
大前提として、契約はどちらか一方が不利で良い。
契約書ってなんとなく、お互いが平等な立場でお互いにとって不利益がないような契約を結ぶ気がしませんか?
自分自身もそのような理解を最初していて、大きな過ちだと後から気づきました。
契約においての公平とは「サインするかしないかの公平」であって、「内容は一方的に不利なもので良い」のです。
契約書の構成
契約書の構成は、何枚か見てきましたが、ざっくりいうとこんな感じで構成されています。
- 誰と誰が契約するのか(甲、乙などと記載される。ちなみに甲、乙、丙の3者間もあるよ)
- 契約書の目的
- 目的に沿った内容
- 秘密(機密)保持義務
- 善管注意義務(これは大体入っているけど、ちゃんと誠実にやろうねって念押し条項)
- 損害賠償
- 協議事項(ここに書かれてないことが起きたらどうするかみたいな文言)
- 裁判所(大体地方裁判所。記載理由は、アメリカの法律を適用すると前提が崩れるため)
- 署名(契約者の氏名と住所。住所を記載するのは同じ名前がありえるから)
絶対に間違えてはいけないのは、契約者と、最後の署名の整合性
誰が契約するかについて一番最初に記載されています。そして、最後に署名します。
この署名が全て、本当に全て。
例えば、ワードで作成して、甲乙双方をワードで記載して。これで良いですね、ってハンコをはしょったら、契約書の意味はない。
だって、誰が同意したかを客観的に証明できないから。
甲乙丙の三者間契約も同様。甲と乙で話し合って決めて、丙にも同意してもらおうね。
(例えば、派遣先と派遣元と、派遣労働者)
って言って、甲と乙の署名だけじゃだめ。絶対に契約書に登場する全員の署名をもらうこと。
言い回しに注意。
これはマジで大事。
出来る。→出来るけど、義務は無いよね。
する場合がある。→しなくても別に問題は無いよね。
協議に応じる。→別に賠償する義務は無いね。
契約を解除することが出来る。→しなくても良いけどね。
しなければならない。→絶対にすること。しなくても良いって口頭で言われてもしないと裁判で負ける。
「前各条項について~」→「今まで出てきた全ての内容において」*全各条項もあるよ。
「ただし、~~の場合を除く。」→契約書の基本は、全てをNGにして、限定的にOKを出す構成にしよう。
契約書の全体的な流れと構成。ここは絶対に理解して欲しい。
最初のリストで流れを書いた、『順番には理由がある』よ。
最初に目的から、双方にやるべきことを書いて、お互いに誠実に実行をするように約束する。(*善管注意義務)
そして、その業務を行うにあたって開示しあった情報には双方に「秘密保持」が紐づいて
今まで出てきた全ての内容、委託した業務責任に「損害賠償責任」を負わせる。
ただし、契約書締結時に想定していなかった内容などが起きたら、協議をする。
協議の結果お互い妥協できない場合は、「(裁判所」で争うことになる。(管轄裁判所の指定)
こんな感じの流れだよ。
損害賠償請求について
損害賠償請求が、けっこう契約書において一番大きな争点となることが多いですよね。
損害賠償請求の書き方(テンプレート)
第〇条(損害賠償請求) 甲又は乙は、債務不履行その他請求要因のいかんに関わらず、自己の責めに帰すべき事由により、相手方に損害、損失、費用(合理的な弁護士費用を含む。)を与えた場合は、これらの損害、損失、費用等を賠償するものとする。
損害賠償請求の上限規程ってよく書いてあるけどどうなの。
サービスを提供する側に損害賠償の上限規定が書いてあることが本当によくあります。
例えばこんなこんな感じ
2 ただし、損害賠償の額は利用料(または業務委託料などの文言)として実際に支払った金額を上限とする
これは、サービスを提供する側が損害賠償をされたとしても利用料など実際に受け取った額を上限とすることで、利用者側から損賠賠償請求をされたとしても実際に赤字が出ないようにするために記載されています。
本当にいつも見るから、これが世の中の損害賠償の一般的なものなのか?と疑ってしまうほど。
ただ、もちろんそんなことはなくて、基本的に上限の規定はあってもなくてもかまいません。
しかも、あったとしても裁判で本当に争った場合にはケースバイケースで判断されることも多いみたい。
つまり、上限規定があったとしてもそれ以上の賠償請求が成立することもあるっていうことだね。
ただ、もちろん書いてあることで上限とされてしまうこともよくある話なので基本的には無い方がよい。
なので、強気にこの上限規定は撤廃してくださいと伝えてみるのが良いですね。
それで出来ませんと言われた後に、「その会社と契約するか否かの自由」があるのです。
善管注意義務について
善管注意義務の書き方(テンプレート)
第〇条(善管注意義務)乙は、委託の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委託業務を処理する。義務を負う。
善管注意義務ってそもそもなに?
善管注意義務っていうのは、善良な意思をもって、注意して管理する義務が仕事や職務上ありますよ。
管理者には当然に守らなければいけない一般的なルールや事項がある。そしてそれは必ず義務として守ってください。
ってこと。
具体的にはたとえば「プログラミングの開発を依頼した会社がそこらへんに設計書を投げ捨ててちゃだめだよね」とか。
採用代行会社に、委託したけど、「その面接で個人情報が漏れないようにもちろん丁寧に情報は扱うよね」とか。
いうまでもないし、そこまで契約書全部書く?みたいな一般的に守ってくれるだろうっていうルールはもちろん守ってくださいねっていう義務を相手に負わせること。
この項目の必要性については賛否あるみたいだけど、別になくていいならあって良いと思う。
もしこれがなかったところで裁判で負けるとかはないけど、そもそも裁判になる前に十分に注意してくださいって契約書で伝えられることに意味がある。と個人的には思うな。
だから、とりあえず全部の契約書にとりあえず入れちゃう。
最後に、契約は十分に考えてから行いましょう。
この法務の仕事をやっていると、契約に自由があるということは日常的にもたくさんのことに使えます。
例えば不動産の契約とかも、非常に良いと思っても、ある条項が気になってサインしないで別の部屋にするという交渉をすると大家さん側折れてくれる可能性も十分になる。
一個一個なんでこの文言が書いてあるのか、そのときにどういうことが想定されるのかを想像することが大事。
契約書にサインをしない!!で良いんです。より良い契約先を見つけるのも法務のお仕事です。
まあ、地味だったりするからあんまり分かってくれないこともめっちゃ多いけど、
一個一個自分のスキルになるので積み重ねていきまましょう!交渉は重ねていけばいくほどに自分の練度が増して楽になれるよ!
応援してます。
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